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「新型炉講究国際プログラム」がスタート!

博士後期課程「新型炉講究国際プログラム」が6/20にスタートし第一回講義”Reactor Physics and Design of Advanced Reactors”が行われました。

都市大大学院共同原子力専攻は、博士後期課程科目として「新型炉講究国際プログラム」を開講し、去る6/20に第一回講義”Reactor Physics and Design of Advanced Reactors (新型原子炉・革新的原子炉の炉物理と炉設計)”を実施しました。

 

 

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第一回講義に参加したのは、現在博士後期課程に在籍し、高速炉の安全解析や核変換技術の研究を行う社会人博士2名の他、オブザーバーとして、共同原子力専攻修士課程2名、原子力安全工学科学部生5名の計9名。新型コロナウィルス(COVID-19)対策のためZOOMでのオンライン講義となりました。2020年4月から都市大原子力システム研究室で半年間研究を行う予定であった仏National Graduate School of Engineering of Caenの修士課程学生も本講義に出席予定でしたが、COVID-19の影響で来日キャンセルとなり、日本人のみの聴講となったため講義は日本語で行われました。3時間にわたる講義の概要は以下の通りです。

 

 

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講義概要:

「新型炉」という用語が意味する炉型は多種多様であり、中性子エネルギーによる分類では熱炉と高速炉、出力規模では中小型炉、大型炉、冷却材の種類では主流のナトリウムの他に鉛(鉛ビスマス)、ガス(ヘリウムや炭酸ガス)、水(軽水・重水・超臨界圧軽水)、溶融塩などがある。さらに燃料の化学形態(酸化物、金属、窒化物、炭化物)やその形状(ペレット、被覆粒子、ペブルベッド、溶融塩)による分類もある。本講義では、革新技術を導入したこれらの多様な新型炉について、原子炉物理や炉工学の視点からその原理・特徴や設計概念例を解説。

 

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核分裂資源の利用率を高めるための燃料増殖と、使用済み燃料に含まれる長寿命放射性廃棄物の核変換を同時に達成するには、中性子経済に優れた原子炉の設計と閉じた核燃料サイクルの確立が必須となる。資源小国である我が国の新型炉開発は、燃料増殖型の酸化物燃料Na冷却高速炉を主軸に、もんじゅ事故以降はアクチニド元素を廃棄物としないアクチニドリサイクル型高速炉サイクルを対象に取り組まれてきた。

世界に目を向けると、Na冷却高速炉はロシアで2015年末にBN-800が商業発電を開始、インドでは500MWeの実証炉が完成間近、中国では実験炉CEFRが運転中と着実な開発が進められているが、福島第一原子力発電所事故を経験した2011年以降は、

 

  • 資本費が安くリモートエリアにも建設が容易な小型モジュール炉(一体型小型PWRなど)
  • 事故時の放射能拡散・公衆の避難を排除する海底設置式小型炉
  • 安全性・信頼性、発電コストや経済的リスク、燃料持続性や長寿命廃棄物低減、そして核拡散リスクに配慮した第四世代炉概念であるNa冷却高速炉、鉛(ビスマス)冷却高速炉、ガス冷却高速炉、高温ガス炉、塩化物塩高速炉、フッ化物塩熱炉

 

など、多様な炉概念へ期待の高まりがある。

この様な中、都市大でも若い学生達がプロ集団である研究機関に負けじと、

  • 事故時の放射能拡散・公衆の避難を排除する被覆粒子燃料軽水炉
  • 水冷却材を用い燃料増殖や負のボイド反応度を達成する重水冷却トリウム増殖炉
  • 濃縮や再処理が不要な進行波炉(CANDLE炉、Breed/Burn炉)
  • 太陽光の届かない外惑星探査向け原子炉(推進用/発電用)

などの新型炉の研究に取り組んでいる。

 

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1F事故以降、国内の原子力は、最優先課題である「軽水炉再稼働」や「廃炉」に注力してきたが、それだけでは将来の原子力とそれを支える優れた人材の未来を描ききることは出来ない。原子力のリスクとメリットを謙虚に正しく認識し、世界動向をウオッチしつつ、日本なりの新型炉開発を考えて行く必要がある。

 

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