教員と担当科目
鈴木 徹(すずき とおる)
熱流体工学(2年後期)、原子炉伝熱・流動工学(3年前期)、原子力安全工学(3年後期)、原子炉熱流動学特論I(修士1年前期)、原子炉熱流動学特論II(修士1年後期)
研究概要
本研究室では、わが国のエネルギー供給の中核を担う原子力発電システムが一層安全なものとなるよう、関連する基礎研究を推進するとともに、それらを踏まえて発電システムの安全性を評価するための方法論を追求します。人間が快適な生活を送るために体内を循環する血液をコントロールしているのと同様、発電システムでは内部に存在する様々な「流れ」の特徴を捉えることが重要です。発電システムでは通常の運転時、冷却材の「流れ」によって炉心で生成した熱がタービンに伝えられます。また、福島原発事故のようにもしも炉心が損傷した場合、燃料の破損や構造材の溶融に伴って非常に複雑な熱と物質の「流れ」が発生します。本研究室では、このような発電システムの内部で見られる様々な「流れ」の中から安全性を考える上で重要なものを取り上げ、熱および流体工学の学問的基盤を通して安全設計の考え方、評価のしかた、安全性の向上に有効な革新的技術等について学術面と実用面の双方から追求していきます。
社会との接点
福島原発事故以降も原子力発電は我が国の発電の一部を担う重要な電源であるため、学外の研究機関や産業界との接触が多い研究室です。卒業生には、我が国ばかりでなく世界レベルで電力会社、原子力メーカ、原子力研究機関に就職し、第一線の技術者として活躍できる前途が待ち受けています。そのためには確固とした専門技術が必須であり、基本的な知識を徹底的に習得する教育に重点を置いています。適度な緊張感を持って、楽しく研究を進めることができます。
研究室の横顔
熱および流体の研究は現象を観察しながら計測・評価するのが基本であり、実験は欠かせません。たとえ規模は小さくとも、実験を通して熱流動現象に関する物理的な感覚を体得することに先ず重点を置きます。次に、そのように体得した熱流体現象が実際の発電システムの安全性の評価においてどのように位置づけられるのかを学びます。気体や液体が混合した複雑な「流れ」は多相流と呼ばれ、未知の領域がまだまだ多く残っているため、ちょっとした創意工夫で世界最先端のレベルに到達できます。学生の皆さんが「夢」と「やりがい」を実感できるとともに、産業界が解明を期待するようなテーマが準備されています。
テーマ例
・軽水炉の内部を循環する冷却材の熱的限界の素要因に関する研究
・軽水炉の発電システムを構成する配管内で起きる気液二相流に関する研究
・軽水炉の内部を循環する冷却材の熱と流れが材料に及ぼす影響の研究
・新型炉の内部で形成される多相流の評価手法に関する研究
・原子力発電システムの事故を確実に収束させるための安全システムに関する研究