原子力リスク評価工学
安全規制あるいは安全確保活動は、対象施設が公衆や従業員の安全及び周辺環境の保全に過度のリスクを与えないために行うものであり、すべての安全規制あるいは安全確保活動はリスク評価に基づいている。最近の確率論的安全評価(Probabilistic SafetyAssessment:PSA)技術の進歩により、原子力施設における支配的リスク要因であるシビアアクシデントに起因する定量的リスクを把握できるようになってきた。原子力発電所のリスク評価について説明する。
原子力危機管理
原子力発電所は深層防護の考え方に基づき、①故障やトラフブルなどの異常の発生を防止する対策、②異常の拡大及び事故への発展を防止する対策、③放射性物質の放出を防止する対策などを多重に実施することにより安全を確保しているが、さらに、万一の場合に備えて、④過酷な事故(シビアアクシデント;SA)の進展防止と周辺環境への放射性物質の大量放出を防止する対策(アクシデントマネージメント(AM)と⑤放射線影響の緩和を図る防災対策かがなされている。さらに、最近は⑥テロに対する設備及及び人的管理が求められている。これらについて説明する。
材料力学
材料力学は、機械構造物・要素の設計において根幹をなす基盤的学問であり、設計対象に対して十分な強度や安定性を与え、さらに、経済的観点を考慮した設計を行うための力学的手法を修得し得る学問である。講義では、物体の内外に作用する力と変形とが比例関係にある線形弾性体を扱い、その基本的な考え方から教授するとともに、より深い理解と講義内容の修得を目的として多くの演習や小テストを行う。
原子力設計製図
製図は設計思考の情報手段として重要な役目がある。本講では、機械製図法に基づく製図をCADにて実施しその操作力を習得する。最後の総合実習では、課題を基に自ら設計し設計力を養うものとする。
耐震安全工学基礎
原子力機械構造物の耐震設計に必要な「機械力学」を中心に取り上げ、機械力学に関する基礎的知識と設計に関する考え方を修得することを目的とする。ここでは、運動方程式の解法に関する知識を学ぶだけでなく、演習を取り入れ、問題を解くための力を養うことにより、原子力機械構造物の耐震設計の基礎を修得する。さらに、後半に、地震動や津波のメカニズムの基本を学ぶと共に、地震や津波に対するリスクの考えを取り入れた原子力発電所の地震・津波リスク評価による耐震設計手法の基本的考え方を学ぶ。これらの講義により、原子力発電所の耐震安全性確保の基本的考え方と問題解決のための基礎を学ぶ。なお、2年次の前学期に学ぶ「材料力学」と本講義を履修することにより原子力施設の耐震設計のための必須基本知識を得ることができる。
原子力機械耐震工学
原子力プラントの安全確保のためには、耐震設計は非常に重要である。本講義では、原子力プラントの重要な機器・設備の耐震設計に必要な機械力学および材料力学的な知識、耐震化成績の基礎理論および具体的な設計方法を修得することを目的とする。本講義においては、構造物の運動方程式の解法に関する解説や具体的な耐震設計法の解説だけでなく、演習問題や耐震上の課題を提示し、これらについて取組むことで問題を解くための力を養うことにより、原子力機器・設備の耐震設計法を修得する。なお、3年次の前期に同時に開講する「原子力建築耐震工学」、「原子力土木耐震工学」および3年次の後期に開講する「原子力耐震安全評価工学」を履修して、原子力プラント全体の地震リスク評価法を用いた耐震安全確保のための専門知識は完全なものとなる。本講義はこれら全ての講義に必要な共通の基礎知識と基礎理論を修得するための講義でもある。